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寄り道 ss.ver

いつもの寄り道のちょこっと豪華版になります。
渋の方で最後のやつを上げるのはダメかと思い、こちらにも投下しました。








第七特異点、古代ウルクでの人理修復の旅は岐路に立たされていた。
「さっさと行きなさい!」
「でも!」
「いいから!此処でアンタがやられたら元も子もないでしょ!?」
「先輩…」
人類最後のマスターである藤丸立花。
そしてそのサーヴァントであるマシュ・キリエライト。
彼女達を叱咤しているのは疑似サーヴァーントとして召喚された女神イシュタル。
三人は復活したティアマト神を止める為、彼女に肉薄していた。
だが彼女達の前に現れるラフムによって足止めされていた。
一刻も早くティアマトを倒し、ウルクを守らなければ人理は確実に焼却される。
そうなれば今までの全てが無に帰す事になるだろう。
それが分かっている故にイシュタルは立花とマシュを先に行かせた。
例え一人孤立すると分かっていても。
「i:@q?i:@q?」
「64 64」
「ggg!b; d@7j!」
「行かせないっての!アンタ達は私が残らず消し飛ばしてあげるわ!」
そう言ってイシュタルはマアンナを構えた。
『さっさと母さんを倒してきなさい。さもないと…』
目の前のラフムを殲滅する事に迷いも敗けるつもりも無い。
しかしラフムはティアマトの排出する黒泥から無限に湧いてくる。
女神といえど今は疑似サーヴァント。
実力にも魔力にも限りがある。
それにこの後ティアマトを冥界に落すという計画もある。
『こんな所で…』
「敗けてらんないのよ!」
イシュタルが右手をかざすと、マアンタから無数の矢が飛び出してくる。
その矢は的確にラフムの頭を撃ちぬいていく。
此処に散らばっていたラフム達が集結し、互いを守ろうとすれば矢を束ねて撃つ。
上空からの攻撃が可能なイシュタルにとって、ラフム達は格好の的だった。
「:::::!」
「しつこいっての!」
状況はイシュタルに有利、のはずだった。
「g@fffff!」
「なっ!?」
飛行できるラフムが現れるまでは。
「gd733333333!」
「あぐっ!…こんのぉ!」
触手のような腕で右肩を貫かれたイシュタルだったが、返す刀で飛行するラフムを切った。
「っぅ…っとにいい加減にしてほしいわね…」
傷口を押さえつつ、目の前を見るとまたも飛行するラフムが出現していた。
「女神をなめんじゃないわよ!」
だがイシュタルの闘志は未だ折れていなかった。












「はぁー…はぁー…はぁー…」
それからどれだけの時間が経ったか。
イシュタルは幾度か宝具を用いて当たりのラフムを殲滅していったが、
次第に追い詰められていた。
その姿は正に満身創痍。
右肩に続いて左太腿も貫かれた。
そして右頬にはかすり傷ではあるが、裂傷も見受けられる。
だがそれだけではなかった。
彼女が魔力を消費すればするほど傷口が疼く。
チリチリとむず痒いような感覚と共に力が抜けていくのがはっきりと分かる。
もはや辛うじて浮いているので精一杯といった様相だった。
「やっばいわね…これじゃもたないかも…」
額に汗をかき、いつになく弱気な彼女は見た目相応の少女に見えた。
「でもやっと収まった…のかしら?」
辺りを見渡すと、一面泥で覆われている以外は何もない。
あれだけ出てきていたラフム達も今は一体もいない。
立花達の方へ行ったのか?
それとも他に何かあるのか?
「なっ!?」
そう考えた瞬間イシュタルの目の前の泥が津波のように盛り上がり、彼女へと迫っていた。
「まずっ」
「Aaaaaaaaaaaa!!」
「!?」
咄嗟に上空へと逃げようとしたが、突如ティアマトの声が辺りに響き渡った。
それを聞いた瞬間、イシュタルの身体は金縛りにあったように動かなくなった。
『あっちゃぁ…これはもう駄目ね…』
これがなんなのか、イシュタルにはおおよその予想はついていた。
「後は任せたわよ」
それは誰に対しての言葉だったのか。
人類最後のマスターか。
それともそのマスターを支える少女に対してか。
はたまた半身とも姉妹ともいえる冥界の女神に対してか。
そしてイシュタルがそっと目を閉じると、泥の津波は彼女を一気に飲み込んでいった。









……エ……イ…
右も左もわからない空間。
此処が何処なのかはわからない。
わからないが予想はできる。
目を覚ます前に見た光景は迫りくる泥。
そして今感じている感覚。
まるで母に抱きしめられているような感覚。
安堵と幸福が心を満たしていく。
傷ついた身体が新しい形で修復されていく。
傷口は塞がり、その箇所にはラフムのような模様が浮かび上がる。
そこから身体の色が変化していく。
白雪のような肌は土くれのような暗い色に。
カラスの濡れ羽のような黒髪はキラキラと光を反射するような銀色に。
慎ましやかな身体は成長し、少女の見た目から女性へと変化した。
『結局…私は何もできなかったなぁ…』
美と豊穣を司り、力を持って敵を打倒してきた。
例えそれが人々に疎まれようとも。
人類最後のマスターである立花に協力し、自身を生み出してくれた母とも言える存在に
刃向った事も彼女の考えに照らし合わせれば間違ってはいないだろう。
だが今の彼女は後悔に苛まれていた。
『私がもっとちゃんとしていれば…』
脳裏に浮かぶのは自分の失態。
『あの時ああしていれば』
『もし私がうっかりしていなければ』
初めはこの戦いにおいての自分の失態だったが、次第にそれは変化していった。
『そもそも母さんと戦う事自体が間違いではないのか?』
『どうして母さんを説得しようと思わなかったのか?』
『マスター達を説得し、降伏していればこんな事にはならなかったのではないか?』
『母さんに許してもらえれば人理なんてどうにでもなるのではないか?』
僅かな疑問からみるみる歪んでいく。
次第にイシュタルの中で悪は自分達の方ではないかと思い始めていた。
『ああ、許して母さん…』
『私が悪かったの。皆が悪かったの』
『なのに母さん一人のせいにしてた』
『母さんは私達を愛していたのに』
母親の愛情という名の泥を一身に受けてイシュタルは生まれ変わっていく。
元の彼女とも憑代となった少女とも違うナニカに。









「ん~~~!!っと」
イシュタルだった者は泥で出来た空間で目を覚ました。
既に彼女は身体だけでなくその精神も変わっていた。
「ふぅ…お母様の御慈悲で許してもらえたけど、なんだかしまらないわね…」
生まれ変わった自身の身体を見てイシュタルはため息をついた。
「q@ed@942@?」
「あら…ええ、問題ないわ。ありがとう」
チョンチョンと背中をつついてきたラフムに、イシュタルは笑顔で答えた。
「m4ehk?」
「ええ。だって外であの子達が暴れてるんでしょ?」
イシュタルが目を細めると、立花とマシュがティアマトに向かって疾走している姿が見えた。
「cyutZb4w@ehk?」
「おっと、そうね。お母様により美しくしてもらった身体を無闇に晒す物じゃないわね」
イシュタルは屈んで両手に泥を取り、それをゆっくりと、愛おしそうに飲み込んでいった。
すると彼女身体から泥が吹き出し、身体の一部に集まっていく。
そして泥は彼女が以前に纏っていた衣服となった。
しかしその様子は以前と違い、彼女が以前の彼女でなくなった事を如実に表していた。
白い部分が黒く、黒かった部分は血のような赤色になっていた。
そして彼女に刻まれているラフムを模した模様も、同じような赤色をしていた。
「それじゃ、行ってくるわね」
「g=z:w」
「うん」
心配そうにするラフムに、イシュタルは笑顔で手を振った。










「先輩!もうすぐです!」
「うん!」
立花は立ち止まらず走り続けていた。
振り返れば後悔で足が止まってしまいそうだから。
立ち止まれば二度と進めなくなりそうだから。
だから彼女は走り続ける。
ティアマトに近付き、倒すために。
だから彼女はティアマトだけを見つめる。
決して目を逸らさずに。
だがそれが仇となった。
もし彼女が周囲に気を回していれば気付けたかもしれない。
音もなく立花達の後ろに出現した彼女に…
「え?」
それは立花の口から出た言葉なのか、マシュの口から出た言葉なのかはわからない。
気づいた時には立花の左胸から光の矢が飛び出ていた。
どうして?
何故?
突然の事に立花もマシュも思考が停止してしまっていた。
「心配しないで。それで死ぬ事はないから」
つい少し前まで聞いていた声。
自分達を信じて送り出してくれた声。
そして今、一番聞きたくなかった声。
二人が振り返ると、そこには笑顔のイシュタルが立っていた。
その姿を一変させて。
「イシュ…タル?」
「ええ、そうよ。でももう貴方達が知っている私じゃないけどね」
「イシュタルさん…その姿は…」
「これ?見てわかるでしょ?お母様にもう一度子供として産み直していただいたの」
誇らしげに両腕を広げてその身体を見せつけるイシュタルに、二人は絶句していた。
「うぐっ…」
「先輩!」
茫然としていた二人だったが、胸の痛みによって立花は倒れそうになった。
マシュはなんとか立花を支える事に成功したが、胸に刺さっている物体を見て困惑していた。
『マズイぞ!立花ちゃんに刺さっているのは………魔……』
「ドクター!?ドクター!?」
「この場に居ない者に邪魔されるなんて嫌でしょ?全く無粋なものね」
マシュがイシュタルを見ると、銀に光る髪をかき上げていた。
「………」
只の動作。
その一つを見ただけでマシュはイシュタルから目を離せなくなった。
この世のあらゆる美を集結させたかのような美貌とオーラ。
肩に立花を抱えている事すら忘れてイシュタルに見とれていた。
「うぁ…」
「はっ!せんぱ…っ」
立花のうめき声を聞いてようやく意識を取り戻したマシュだったが、立花を見た瞬間に
言葉を失った。
全身の血管が浮かび上がり、そこからジワジワと肌の色が変化していく。
マシュが見た時には身体のほとんどが浸食されていた。
「あ…え?」
「さあ立花?初めてのお仕事よ?頑張りなさい?」
「…うん」
混乱し固まるマシュをしり目に、イシュタルは立花に話しかける。
そしてそれを聞いた立花は口元を歪に変化させて返事をした。
『令呪を持って命ずる。マシュもおかーさんの娘になれ!』
「あぐっ!?」
左手の令呪を三画全て使っての強制命令。
本来であればどんな英霊であろうと、マスターの命から逃れる事はできない。
「うぐっ…だめ…こんな…」
だがマシュは辛うじて耐えていた。
デミ・サーヴァントであるからか。
はたまたギャラハットから受け継いだ力の為か。
それともマシュ自身の精神力のおかげか。
理由はともかくマシュは立花の令呪からなんとか耐えられていた。
「?マシュはわからずやさんなのかな?」
「だったらもっとお願いしないとね」
「うん。マシュはちゃんと聞いてくれるまで」
「なぁっ!?」
マシュが肩に担いでいる立花とは別に、二人を囲むように立花が現れた。
それは牛若丸が見せたモノと同じ。
個体増殖。
全てがオリジナルであり、一人倒されても影響はない。
そんな立花全員が左手を挙げる。
「せんぱ」
『令呪を持って命ずる。マシュ、おかーさんの娘になりなさい』
『令呪を持って命ずる。マシュ、おかーさんの泥を拒まないで』
『令呪を持って命ずる。マシュ、おかーさんの愛を受け入れて』
『令呪を持って命ずる。マシュ、おねーちゃんのいう事を聞いて』
「ああああああぁぁっぁぁぁぁぁぁあああぁぁああぁあぁぁあ!!!」
一人一人が三画全てを使っての命令をしていく。
たった一人の命令ですらジリ貧だったマシュにとって、それは正しく悪夢だった。
「うまい、うまい。お母様から頂いた力をちゃんと使えてるみたいね」
それを見ていたイシュタルはパチパチと手を叩きながら笑顔を浮かべていた。
やがて周りの立花がいなくなり、肩に担がれていた立花とマシュだけになった。
「はぁーはぁーはぁー」
「マシュ、辛そう…私が元気にしてあげるね?」
「んぶっ!」
地獄のような精神攻撃を受けてなお、マシュは立花の事を離していなかった。
そんなマシュを嬉しく思ったのか、立花はマシュの唇を奪った。
「んふふふふ…」
「おご…んぐ…えぐっ…」
気持ちよさそうにキスをする立花とは対照的に、マシュは白目をむいていた。
それもそのはず。
立花の口からは大量の泥が流れ込んできているからだ。
その泥はマシュの身体を犯し、精神を溶かし、彼女を作り替えていった。
「………」
「マシュ?」
「えへへ♪」
「わっ!」
「ん~」
数分後、動かなくなったマシュを立花が心配していると、マシュは嬉しそうに立花に
飛びつき頬ずりを始めた。
「ますたぁー」
「んもう。違うでしょ?マシュ?」
「わたしにとってはお姉ちゃんはますたぁーなんです。これは変わらないんです」
「えー?」
「あらいいんじゃない?」
不満そうにする立花に近付いてきたのは遠目から観察していたイシュタルだった。
「おねーちゃん!」
「うん。よくできたわね。えらいえらい」
「エヘヘ~だっておねーちゃんの妹でおかーさんの娘だもん!」
嬉しそうにする立花の頭をイシュタルは慈愛の表情で撫でていた。
「マシュもようこそ。大丈夫?身体はどう?」
「はい、大丈夫です。母さんに作り替えてもらったので万事万全オールオッケーです」
「それはよかったわ。じゃあ行くわよ?」
「うん!」
「はい!」
そして三人は共に駆けてゆく。
今度は来た時と逆に向かって。
母の子供を増やす為に。
泥イシュタル
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